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僕は急に怖くなって、立ち上がった。「帰ります、失礼しました!」と言って慌ただしくリビングを出る。
背後でブルーマンがクスクスと笑っていたので、やっぱり僕をからかう嘘だったのかもしれない。玄関で靴を履きおえた僕は、振り返ってブルーマンをにらんでやろうとした。
その時、ブルーマンの肩越しに二階に続く階段が見えた。そこに、異質なものを見つける。階段の途中、あちこちについている赤いもの。染みみたいに見えるあれは、来たときにあっただろうか。そして、階段上の方をチラリと見れば──。
僕は青ざめて、乱暴に玄関扉を閉めて走りだした。背後からブルーマンが追ってきていないかを何度も確認し、自分の家にたどり着くまで気が気でなかった。
ブルーマン。青い服ばかり着て、青を好む男。
彼はそれは、安心できる、保護色だと言った。
でもそれはどちらかと言うと、警戒色だったんじゃないのか。食うな、うまくないぞ、と相手に思わせる不快な色。それを彼は、父親に対してずっと身につけていたのだ。母親を食べさせた、食人鬼である父親に食べられないために。
部屋のベッド上で毛布にくるまり、ガタガタ震えながらそう考えていた。思い出すのは、ブルーマンに関する根拠のないウワサ。
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