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翌日、学校へ行ってもこのことを友人たちに話すことはなかった。自分自身が早くこの出来事を忘れたかったのかもしれない。
その後もブルーマンに関するウワサはたびたび耳にしたが、そのうち同級生たちもそんなことを口にしなくなった。子どもの興味の移り変わりは激しい。他の目が引くようなものがあれば、あっという間にそちらへ群がる。
でも僕だけが、引き止められるようにブルーマンの影に捕まっていた。
だから中学へ上がる時に、親の都合で他の町へ引っ越しになることが決まったときは嬉しかった。親は僕が嫌がるとでも思っていたのだろう。そんな反応に逆に心配されてしまった。
そうして新しく始まった生活は、きらびやかではないが順調で、いつしかブルーマンのことも忘れていた。人並みに勉強し、部活に励み、恋をし、大きくなっていく。僕も大人になった。
そんな僕の今の悩みを、ここまで話を聞いてくれた君に聞いてほしい。そう、君に。
僕には今、悩みがあるんだ。それはきっと、長年奥にしまい込まれていたものだったに違いなく、ずっと僕の中にあったものだったんだ。
もう一度、あのハンバーグが食べたい──と。
あれは一体、何だったんだろうね? 今思えば本当に、ただの悪質なドッキリだったのかもしれない。でも僕は、いまだにあのハンバーグ以上のハンバーグに出会えていないんだ。どうしたらもう一度、食べることが出来るんだろう。
その答えは、あの町に戻ったら分かるのかもしれない。彼にもう一度会って、話を聞けたら。
…………。
ここまで、僕の話を聞いてくれてありがとう。これで僕のお話は、おしまいさ。つまらない独白でごめんね。それじゃあ……さようなら。
終
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