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 そのほとんど全てが憶測であり妄想の産物としても、少年たちの生活に張りを与えるには十分なものだった。ただ少年たちは刺激が欲しかったのだ。友人たちも──僕も。  あれはそんな僕が、友人たちと別れて一人で通学路を歩いているときだった。  突然雨が降り出して、慌ててシャッターが降りた古いお店の軒下に逃げ込んだ。今朝母親に傘を持って行けと言われていたのに、忘れんぼうの僕は持って行かなかったのだ。  雨足が弱くなったらすぐに出よう、と考えうつむいていたら、誰かが僕に傘を差した。青い傘だ。  顔を上げると、そこにはブルーマンがいた。  今日も青のシャツにジーパン、青いスニーカーと、徹底的なる青い姿で僕の前に立っていたのだ。 「ブルーマン」  思わずつぶやいた僕は、慌てて口に手をやった。そんな僕をブルーマンは最初きょとんとしたように見て、そしてすぐに口元をほころばせた。 「大丈夫。そのあだ名、知っているから」  初めて聞く彼の声は、穏やかな低さを持っていた。こんなに近くで彼を見るのも初めてだったが、ブルーマンを勝手におじさんだと思い込んでいたので、予想以上に若い男性だったことに僕は驚いていた。  差し出されている傘を揺らし、彼は小さく「ん」と言う。傘を貸してくれようとしているのは分かったが、状況にまだ頭が追いついていなかった。あのブルーマンが、目の前にいるなんて。     
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