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さぁ、と彼は玄関扉を大きく開いてくれた。吸い込まれるように、僕の足は動いた。わき上がるのは不安よりも興奮。ブルーマンの家に、ついに入り込めたぞ──と。
「じゃあ……お邪魔します」
ブルーマンに促され、リビングまで案内される。そこはいたって普通のリビングだったが、心なしか青のアイテムが多いような気がした。それがちょっとだけ嬉しい。
「やっぱり青が好きなんだ」
もらした僕の感想に、キッチンに向かう彼は笑った。
「ブルーマンだからね。青いものはほとんど僕の私物さ」
「他に誰かいるんですか?」
「父が一人」
彼はそう言うと「そこに座って」とダイニングテーブルを示した。四つあるうちの一つの椅子に、僕は座った。すぐに彼は冷たいジュースとお菓子を持ってきてくれる。
「ありがとうございます」
「礼儀正しいね、きみ」
「そう? じゃあ敬語やめてもいい?」
「はは、面白い子だなぁ」
子どもというのは、一度打ち解けられたら早いものだ。彼が聞き上手なせいもあったのかもしれない。僕はブルーマンに関するウワサの真偽を確かめるべく、口数多く話し出した。
なぜ青い服を好むのか、目立つためなのか、職業は何か──まるでルポライターの取材時のように、質問攻めをした。彼は苦笑しつつも、律儀に返す。彼はこう答えてくれたのだ。
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