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「僕は大学院に通っていてね、そこで院生をしている。だから働いてはいないんだよ。  青い服装を好んでるのは、別に目立ちたがり屋ってわけじゃなくってね。なんて言ったらいいのかな……こう、安心するんだよ。この色に囲まれていると」  安心? と首をかしげる僕に、彼はこう言った。 「保護色、とでも言うのかな。青に包まれていると安心できるんだ」  それは僕にとっては、当たり障りのないように返された答えのような気がして、つまらないな、と思った。もっとこう、面白い話が聞けるかと思ったのに。 「ガッカリしたかい?」 「うん、ちょっと」  素直に返すと、ブルーマンはまた目尻のしわを増やした。どうやら彼には、僕の言葉は面白いものばかりらしい。  その時、玄関から扉を開ける音がした。誰かが帰ってきたようだ。その人物はひょっこりとリビングの扉から顔を出し「お客さんかい」と言った。ブルーマンの父親だ。五十代に見える白髪交じりの彼は、ブルーマン同様背が高かったが、青い服ではなく普通のポロシャツにスラックス姿だった。 「近所の子だよ。傘を返しに来てくれたんだ」 「そうかい」  僕は小さく頭を下げたが、彼は興味なさげに見やって扉を閉じる。それだけで彼が人付き合いの苦手な人物だとわかった。 「ごめんね、無愛想な父で」     
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