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夫婦のうちの男性はもちろん、さっきの父親だ。こちらはあまり印象は変わらなかった。その横の女性が母親──でもブルーマンは、一緒に暮らしているのは父親だけ、と言った。離婚か死別だろうか。
幸せそうな家族写真を囲うフォトフレームは青い。その色が、ブルーマンが置いたものだと僕に示していた。
しばらくの空白の時間のあと、戻ってきたブルーマンはエプロンとレシピを手にしていた。すぐにキッチンに入り「ちょっと待っててね」と笑う。
意外とよく笑うブルーマンは、意外と料理上手で、意外にもパパッと一品仕上げてしまった。あつあつのハンバーグだ。
「どうぞ召し上がれ。合い挽き肉のハンバーグだよ」
「うわぁ、おいしそう」
小さなハンバーグはそれだけでおいしそう。人参もキャベツもつけ合わせは何もなかったが、ふっくらと可愛らしい楕円形がそこに一つ鎮座していた。デミグラスソースもシンプルなものだが、てらてらとして魅力的だ。
子どもの視野は狭い。その時の僕は真っ先にハンバーグだけが目に映り、差し出されたフォークとナイフでワクワクと食べたのだった。
「うん! おいしいよ」
「それは良かった」
ブルーマンも前の席に座り、自分のハンバーグを食べ始めた。咀嚼をし飲み込むと「うん、イケるね」なんて気取って言った。
なんだ、ブルーマンなんて全然怖くないや。普通のお兄さんで、ただ青い服装が好みの料理上手な人なんだ。僕の認識はくつがえされかけていた。
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