基博の手紙

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基博の手紙

 あなたとお別れしてから1年半。今思えば、あっという間に時間が経った気がします。  最初は周りからの反対は少なかったんですよ。むしろ積極的に勧めていた人もいたくらいですから。でも僕が大学3年で留年した頃から、あなたとお別れするように周りから言われるようになりましたね。それこそ知人からも、家族からも。でも僕は頑なにそれを拒んだ。  どうして私があなたと別れられなかったのか、心身ともにボロボロになるまで深入りしてしまったのか、最近やっと僕にも分かってきた気がします。僕は劣等感の塊だった。誰からも比べられ、いじめられ、否定され、そんな自分を自分で否定するしかなくて。でも、あなたがそばに居てくれるときだけは、僕は僕でいることができた。あなただけが、僕の居場所だった。  もう周りからとやかく言われる人生なんて御免だったんです。だから、あなたと一緒にいる人生を選び続けた。そう、それこそ「何を犠牲にしたとしても」です。  でも僕にはやっと、やっと、心底信じてもいいんだなっていう人が現れました。もともと人を信じることができなかった僕だから、本当に信じられるまでは少し時間がかかったけど、それでも、大切な人達です。  昔僕は、「あなたと居るとゆっくりと自殺してしまう。だけど、あなたが居ないときっと窒息死してしまう」という感じでした。でも今は違う。他の生き方を僕はやっと見つけられそうです。  だから僕はあなたに言います。  今まで本当にありがとう。そして、さようなら。 鈴木基博
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