キャンプファイアー

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キャンプファイアー

 8月も下旬になると、切ない夜が長くなる。夏の大三角形をかたどる3つの一等星、デネブ、アルタイル、ベガが見守り、中央のキャンプファイアーがほんのりと4人を照らす中で、基博は手紙を読み終えた。 「どうでした?3人それぞれ手紙を書いて、読んでみて」  精神保健福祉士の資格を持つ赤井涼介が3人に問いかける。 「なんか、別れた恋人に宛てた手紙を読んでるみたいな感覚ですね」  遠い目をしながらそう言う幸男の顔を炎が照らす。 「それそれ!俺もそんな気持ちになったよ!」  圭一はそう言いながら手を叩いて大笑いした。 「僕は逆に辛かったです。今までのことが走馬灯のように蘇ってきて。でも、前に進まないといけないんだなってもう一度思うことができました。多分1人では絶対にできなかったと思います」  基博が真剣なまなざしでそう発言すると、他の3人は黙って頷いた。 「そうですよね。どこか懐かしくもどこか切なくなりますよね。そして、そのために失ったものや傷つけた人のことのことを思い出すと、余計に」 「ええ。とても楽しかったし、僕にはそれ以外に生きる術が無かったんですけど、それでも大学中退を報告したときの親友の哀しそうな顔は忘れられません」  涼介の言葉に基博が反応すると、 「そうだよな。俺なんかは最終的に離婚して子供とも離れ離れになっちまったもんな。でもいつかちゃんと養育費を払えるようになりたいと思ってるよ。時間はかかるかもしれないけど、当たり前のことを当たり前にできる大人になりたい」  圭一はさっきとはうってかわって真剣な表情で言葉を紡いだ。 「幸男さんはどうですか?」 「私はまだお別れしてから3ヶ月しか経ってないですけど、ここにいる3人と一緒に頑張っていきたいと思いました。借金も山ほどつくってしまったけど、少しずつ、前に進んでいきたいです」  涼介に促され、幸男はそのように表明する。涼介はそれを聴きながら深く頷くと、再び口を開いた。
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