夏の夜の手伝い

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 ふたをするように腕を痛めつけて心の痛みをやわらげる彼の痛みの原因を、私は分かってやれなかった。  こんなに近くで見ていても、彼の気持ちを知ることさえできない。 「……ください、……ください」  それでも、どうしても生きていきたいという願いの熱量は、痛いほどに感じられた。  彼にとっては長すぎる、短い夜のことだった。 「あげるよ」  私は彼の前に姿を現わし、私があげられる数少ないものの一つをあげることにした。 「欲しいなら、受け取って」  自傷の手を止めて戸惑う彼に微笑みかけ、枕にもたれかかって、薄着の私のすべてを彼に開いた。  すがるように覆いかぶさる彼の背中をぎゅっと抱いて、私はそのまま彼のものになった。 「生きていていいからね」  彼はしばらく、ただ涙をこぼした。  時計は速度を取り戻して進み始め、彼の果てるまでの時間も、また非常に短かった。
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