0人が本棚に入れています
本棚に追加
ショートストーリー
夢を見た。
あの子がいた。別の子と、その別の子に良く似た子もいた。最後の子は全く知らない。けれども確かに「いる」のだけは理解していた。夢の中の私は、あの子さえも姿は違うが呼ばれている名前であの子だと認識した。存在だけで姿も浮かばない子を不思議と思う事は無かった。夢の中の私にとって、4匹いると言う事だけが確かな事だった。
あの人もいた。普段は全く関わりの無い別の人と違和感も無く会話していた。二人の共通点である筈の私を介さずに。私もまた、其れを違和感も感じること無く眺めている。二人は端々におかしな言動を見せていたが、夢の中の私は気付かない。それどころか、一緒になっておかしな事を私もしていた。
終いには全く見知らぬ人と私は話していた。何処かで見掛けた事がある訳でも無い人。その人の言葉に私は涙した。正しくは、涙する程「嬉しい」と言う感情を爆発させた。夢の中だけで無く現実の中でも、あれ程激しい感情の爆発は数える程しか無い様に思う。けれどもその至福と呼べる感情の激しさが返って私にそれを夢と認識させた。
瞬間、見知らぬ人は消えてしまった。
その人が私にした行動、その人に伝えられた言葉、結果の私の感情。それらは目が覚めてからもハッキリと覚えている。それなのに、その見知らぬ人の姿形、声音の一切が、どれだけ考えても浮かばない。覚えている事はその人が「見知らぬ人」だったと言う事だけだ。
果たして私はその人に会う事があるだろうか。その人に会った時に、私はその人と「わかる」のだろうか。そんな事をもう随分と長い間考えて過ごしている。
最初のコメントを投稿しよう!