サヨナラノ言ノ葉

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「神社を出たらさよならだな」 「うむ。二度と会うことはあるまい」 「何か淋しいな…」 まだ知り合ったばかりで、そんなに仲良くなったワケじゃないけど、やっぱりお別れとなると淋しい。 二度と会えないなんて言われるとさ。 「蓮香、彼に桜色に菊水の紋が入った札を二枚出してくれる?その札があれば帰れるはず…」 菊水さんの息が荒くなって、起き上がっているのもつらそうな表情になる。 比良坂が慌てて、でも優しく布団に寝かせた。 「身体が丈夫ではないのだから、ゆっくり眠ってくれ。この疲れよう、楼門を閉めて呪符を飛ばしたのだな」 「比良坂は何でもお見通しなんだね。そうだよ、彼が異質だから…怖くな…うっ!」 げほげほと苦しそうに咳き込む菊水さんを比良坂が手を握って祈るように見つめている。 その痛々しい光景を引き起こした原因が自分だと思うといたたまれなかった。 「菊水、札二枚あったぜ。こいつに渡せばいいのか?」 「鳥居から出る時に一枚を口にくわえ、もう一枚は左手に持ち、決して振り返らず人家のある場所まで行って、二枚の札をビリビリに破って風に乗せてください。その後なら振り向いても大丈夫です…ふぅ…」
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