真夜中のベランダで

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 僕はのこのこベランダに行くつもりはなかった。慰めなんて欲しくなかったからだ。  だから彼女が待っているとは思ったが、無視していた。なぜ、こんな時に、とベランダの方をにらむと、チラチラと白い物がベランダで振られている。  (何だろう?)  僕は好奇心に勝てず、どうせ顔を見られることはないのだから、とベランダに出た。  すると、振られていた物が、揺れるのをやめた。僕が受けとるのを待っているのだ。ベランダまで出てしまったのだから、と仕方なく僕は手を伸ばして、白い物を受け取ろうとして、ビクッとした。  温かかったからだ。いや、むしろ熱いと言っていい。  僕はおそるおそる差し出された物をしっかり持って受け取った。白い物は紙袋だった。中身を覗いて見ると、ホカホカの肉まんがひとつ、入っていた。  (夕飯、食べてなかったな……。)  唐突に思い出した。気が付いてしまうと、急にお腹が減ってきた。  「あの、ありがとう」  僕は壁の向こう側に言った。彼女の手が、ひらひらして(いいのよ)と答えた。そして彼女は僕を残して、部屋の中に戻っていった。  僕は夜空の下で、ちょっと(こご)えながら、肉まんを食べた。お腹の中が暖かくなって、もう涸れたと思った涙がちょっぴり出た。     
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