真夜中のベランダで

1/7
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

真夜中のベランダで

 最初の日は、ふたご座流星群が近づいて来ている真夜中のことだった。  僕が住んでいるのは、2DKのさして広くはない部屋だ。二階建てのアパートの二階。小さなベランダが付いていた。僕は星に特別に興味がある訳ではなかった。けれどその日は、「今夜は天気がいいから、ふたご座流星群がよく見えるだろう」と会社で同僚達が話しているのを聞いていた。だからなんとなく、流れ星を見てみようかな、という気持ちになったのだった。  冷蔵庫からよく冷えたビールを二本取り出して、ベランダに出る。夜空を見上げると、なるほどよく晴れて、星がよく見えた。    「あっ」  サッと星が流れた。  けれど、「あっ」と声をあげたのは、僕ではない。隣の部屋の人の声だった。  隣の人も、僕と同じでふたご座流星群を見ようとベランダに立っているのだろう。僕はなんとなく、親近感を覚えた。  ベランダの手摺りに手をかけ、ちょっと隣を見ると、手摺りからはみ出た手が見えた。女の人の手だった。     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!