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小窓から差し込む優しい陽射しが、そっと朝を運んでくる。
重たい頭をぐらぐらさせながら、ゆっくりと体を起こした。
ゆっくりと目を開ければ、そこに広がるのは見慣れない景色。
ここは一体どこだろう……と考えるよりも先に、聞き覚えのある声が私の鼓膜を揺らした。
「おはよう、カンナ。よく寝れた?」
整った顔立ちの青年が私に向かって声をかけながら、近づいてくる。
こんないい男の友達なんて私にはいなかったはず。
「まだ寝ぼけてる?朝食買ってきたんだけど、一緒に食べない?」
スウッと意識が一気に覚醒していくのが分かって、勢いのまま飛び起きた。
そうだ、私は昨日何故か知らないけれど異世界に迷い込んで、それでもって駅員さんのアルスに助けて貰って。
宿という名の駅の中の空いてる一室をお借りして、そこで一晩過ごしたんだった。
飲んだ後だったから、ちょっとばかし足元フラフラする感じもしなくもないけれどここまでしてもらってて他に迷惑かける様なことはしちゃダメだ。
そう自分に喝を入れて、アルスにおはようと返した。
「ソファだから寝心地悪かったと思うんだけど、腰とか痛くない?大丈夫?」
「ははは、大丈夫です。雑魚寝でもなんでも横になれば快眠なのが私ですから」
そう笑って答えると、少し心配そうな表情を浮かべつつもアルスも笑った。
するとどこからかアラームの音が聞こえて、辺りを探した。
どうやらスマホはご健在のようだ。
昨日ここにたどり着いてから全く意識してなかったけど、誰かと連絡は取れるのか気になった。
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