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音の鳴る方に近づき、自分の鞄を発見しガサゴソと鞄を漁ると愛用のスマホが現れた。
アラームを消して電波状態を確認してみるけれど、残念なことに電波のアンテナマークにバツ印が付いている。
ここでは県外扱いされてしまうらしい。
「それは?」
初めて見るであろうスマホに興味津々のアルスに、そっとスマホを見せた。
「スマートフォンって言ってね、うーん……なんて言えばいいんだろう、電話したりとか調べ物したい時に色々調べられたりと、まあ優れものって所かな」
「へえ?!やっぱり他の世界にはその世界なりの進化があるんだね。昔、父に聞かされたことあったけど本当だったんだ」
「ここだと使い物にならないから、何とも言えないんですけどね」
ポケットに仕舞い込みながら念の為に電源をoffにしておく。
いざ使えるという時に、充電切れは痛いところだ。
ボサボサの髪を手櫛で直しながら、通された部屋へと入ると休憩所のような机が並べてある広い空間に、何人かの他の駅員さんの姿が見えた。
ビクビクしながらアルスの後ろにピッタリと張り付くようにしていると、クスクスとアルスが笑った。
「大丈夫。ここの皆には俺からきちんと伝えておいたから、何も怖がらなくていいよ」
そう言って椅子を引いて座るように促してくるアルスを信じて、私はそっとその椅子に座った。
すると目の前の机にお椀に盛られたシチューに似た何かと、パン二つが急に光と共に現れた。
朝から驚きを隠せないでいると、向かいにアルスが座ってびっくりした私を見てまたしても笑った。
「ごめんごめん。びっくりした?」
「あの、手品か何かですか?」
何も無い所からこんな朝ごはんが登場するなんて、誰が思いつくだろう。
想像のつかないような出来事に心臓がバクバクしてる。
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