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アルスの前にも同じように光が現れたかと思えば、私と同じシチューのようなものとパンが現れた。
「多分カンナの世界では『カガク』が進歩していってて、さっきみたいな機械がわんさかあるんだろうけど、こっちでは魔法が進歩してるんだよ。今のは全部、魔法」
「ま……ほう??」
「あまり耳慣れないよね。まあ大丈夫、怖いものとかそう言うのじゃないからさ」
流石、異世界。
全く未知のものが行き交っているようだ。
驚くことが多くて、今朝は随分と目覚めがスッキリしている気がする。
美味しそうな匂いに、お腹の虫も暴れ始めた。
いただきますと両手を合わせて、シチューのようなものから一口頂く。
滑らかな舌触りが口いっぱいに広がっていった。
どうやらこの世界の食事は、日本の食文化にあっているらしい。
美味しく頂いていると昨日私を起こしてくれた、羊さんもやってきて声をかけてくれた。
それがきっかけで色んな人が、私とアルスを囲むようにしてやって来る。
最初は少し身構えたが、こちらの世界の人は私という異世界人に対して理解があって、すごく優しかった。
一緒に朝ごはんを摂りながら、こちらの世界のことを丁寧に教えてくれ、いつの間にか私は上手いように溶け込んでいた。
「落し物すぐ見つかるといいですね」
「何かあったら力貸すからよ、いつでもいいな!」
「皆さん本当に色々とありがとうございます……!」
この世界の人達は、こんな見知らぬ人相手にどうしてここまで人がいいのか。
普通だったら他所から来た人に対して、警戒するはずだというのに。
その優しさを受け取りながら、皆で一斉にごちそうさまでしたと声を上げた。
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