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駅を出てその先に見えた景色に、駅前の階段を私は一気に駆け下りた。
見渡す限り花と水で飾られたとても素敵な街に、あちこちに目移りするばかりだ。
知らない花でも、色鮮やかに咲き誇る花々はどこからともなく流れてくる水の水しぶきを浴びながらキラキラと光っていた。
感嘆の声が上がる私に対して、アルスは私の興奮を抑えるかのように肩を叩いてきた。
「どう?気に入った?」
「とっても!こんな素敵な街初めて……!」
笑顔を向けると、アルスはキョトンとした表情を浮かべたかと思うと、頬が薄ら赤く染まった。
首を傾げていると、アルスは片手で口元を覆いながらも行こうと歩くように促してきた。
後を追うようにしながらアルスの背中を見つめる。
なんか私変なことしちゃったかな……でも思い当たる節が見当たらない。
はしゃぎすぎたのだろうか、気をつけて行動しなければと背筋をしゃんと伸ばした。
「……俺は、ただ手助けをすればいいだけ。それだけだーー」
でもブツブツ何か言い始めたアルスに、バレないようにクスリと笑った。
「ふう……さてと。カンナ、探す前に少しだけ観光しよう」
「観光……?私に取っては既に観光のようなものなんですけどね」
異世界に来ている時点で、身の回りのもの全てが新しい。
それで十分に観光と呼べていたが、それに加えて本格的な観光までもしてもいいのだろうか。
「まあそうかもしれないけど、とりあえず俺に案内させて」
「それはもちろん!よろしくお願いします!」
「じゃあ、まずは市場に行こう」
慣れた足取りで歩くアルスに、何故か心強く思えた。
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