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意識していなかった右手がまたしても熱くなる。
そんな私とは違って落ち着いているアルスは、はははと否定も肯定もせずに笑った。
「彼女とは観光に来ていて。思い出に一つ花をください」
「あら、そうだったのね。ならーーこの花なんてどうかしら?」
お姉さんが示したのは、光の加減で白にも青にも見える不思議な花だった。
見たこともない花だけれど、何故か懐かしく感じる。
じっとその花を見つめていると、横からアルスの視線を感じアルスを見た。
「……じゃあ、これ一つ貰おうか。あ、スデューテットにしてもらえるかな?」
「もちろん。100ベギールです。少々お待ちくださいね」
そう言いながら何か魔法をかけ始めたお姉さんを見つつ、アルスがお金を出す音にハッとした。
これは、まずいのではないか?
迷い込んできただけの人間に、宿まで提供して汽車にも乗せて、おまけに花を買うなど。
お金を返せるのなら全然いいのだが、残念ながらこちらの世界のお金は持ち合わせていない。
「アルス、その、お金って……」
「ん?大丈夫だよ、気を使わなくても。俺働いてる身だし。こんな体験もできないんだからさ、少しぐらいお金使わせてよ」
ごめんなさい、とその言葉が喉につっかえるがごくりと飲み込んだ。
気を使わせてはいけない、ここは別の言葉がふさわしい。
「その……ありがとうございます」
「うん。俺もそう言ってもらえて嬉しい」
そうこうしてるとお姉さんが先程の花をラッピングして……って、あれ?
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