観光地をお楽しみください

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先程まで見ていたあの花はいつの間にか姿を変えて、綺麗なネックレスに変身していた。 キョトンとしていると、お姉さんがアルスにそれを手渡しお金を受け取っていた。 「観光、楽しんでくださいね」 「ありがとう。行こうか、カンナ」 またしても手を引かれて歩きだし、慌ててお姉さんに頭を下げた。 魔法というものは本当にすごい。 頭が追いついてこなくて、反応が少し遅れてしまう。 その他にもいくつかの露店を見て周り、噴水の奥にある広場のベンチで休憩することになった。 賑やかな声が少し遠のいたこの場所は、のんびりするのには相応しい。 スっと離れたアルスの左手に、少しほっとしつつも寂しさを感じてしまう。 手渡された露店で飲み物と、サンドイッチみたいなパンを遠慮がちに齧り付いた。 じわりと広がる旨味と、さっぱりした後味が口いっぱいに広がって思わず笑顔が零れた。 「美味しい」 「この街の名物なんだ。気に入ってもらえたならよかったよ」 木陰の下でこんなにのんびりすることなんて、忙しい日々から考えたらできない。 今は思う存分この世界を堪能しよう。 ……でも、本当に私はこの世界に何かを落としてしまったのだろうか。 普通に楽しんでいるけれど、本来の目的を忘れてしまいかけていた。
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