僕はあなたを見つめ、あなたは僕を覗く

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【     】          聞こえるわけないか。 昔読んだ本じゃ幽霊となった少年が力を振り絞って姉に筆談でメッセージを残すという感動的なシーンがあったけど、僕にはないみたいだね。 でも、うん、ずっと決めかねてたけど、決心したよ。 彼女はその後数時間後に去って行った。 「お化粧直してくるね。まだ話したいことあるんだけど、この顔じゃ私が恥ずかしいや」 そう言って去って行った。 去って行ってくれた。 このまま彼女がここで泣いていてしまってたら。 あのまま話の続きをされたら。 僕の決心が、だんだん緩んでいってしまっただろうから。 あなたと会えなくなる、そんな自分に甘い考えにいつまでも囚われていただろうから。 天国とか地獄とかそんな世界があるなんて思わないけど、できるならこの病室の上から君を見るだけじゃなくて。 空よりも上の世界から君を見続けることができたらなぁと僕は思うんだ。 幸せになってくれれば僕はなにも言う事はないよ。 あなたの笑顔が好きだからね。 あ、あと僕の事を出来れば記憶の片隅にでも覚えて置いてもらえれば嬉しいなぁ。 僕は力を抜く。 心電図の線がだんだん、落ち着いて、一本線になっていくのが見えた。
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