黒薔薇編ー結びー

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「ふぅん」 パタン。 「ハァッ、今回もつれない物語じゃ」 「あの子は、二重人格。それによって、〝僕〟が生み出され、鈴を殺した幻想を見たのね」 「実際には誰も死んでないのにさ!ハハハハハッ!」 「品の無い…」 「あー?いーじゃろ、別に」 「良くない。貴方はさっさと次の薬でも作っておきなさい。ーー今回の〝夢幻入人〟良かった」 「お、本当か!アレは人の幻想に出入りできるってんで、自信作だ!じゃあな!」 (本当に、自分勝手…。) 白い頁に劣らぬ白い指で、洋書の表紙の印をすぅ、となぞる。 黒い印。 (黒薔薇……花言葉は…『あなたは私のもの』) それが、どちらがどちらに対してのものなのか。 (難しい) 茶色の洋書に咲いた黒薔薇。 (黒薔薇、あなたは何を見ていたの?) 一週間前。学校の図書室で、未花はこの本を見つけた。 私達が作ったこの本を…。 そこで、運命は変わってしまった。二重人格の一人が、“ある写真”によって凶暴化した。 もう、〝僕〟が未花に戻ることはないだろう。 僕は僕として、未花は未花として、別々に生きていかなければならなくなる。 僕は、鈴を殺したサイコパスとして。 未花は、鈴にいじめられる弱者として。 同じ体の中で。ーーーー耐えきれるか? 最高の場合、生存する事が出来て。 最悪の場合、すぐにでも自殺するだろう。 回避するのは、ただ一つの方法。 鈴が、一歩、踏み出すこと。 闇に溶けきった空に、路地を駆ける鈴の足音が響いていた。 黒薔薇編 END
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