初恋は25年後に

初恋

私は出張で地元に帰って来ていた。商談が不調に終わり、このままホテルに帰る気になれず、なんとなく足の向くまま歩いていると見覚えのある街並みに気づき、近くに母校があることを思い出した

門をくぐり、少し歩くと25年前汗を流したグランドが広がり、うまくいかなかった商談をかき消すかのように思い出がよみがえってくる
「おじさん、ここ関係者以外立ち入り禁止だよ」
こんどは思い出がかき消されるかのように若い声が耳に届いた

「先生呼ぶよ」「待って」私はあわてて、少女を制した。制した瞬間、彼女の姿にハッとした。はじめて会う少女に違和感を感じたのだ
なんだろう。久しく感じだことのないドキっとする、懐かしい、心地よい感じがした

「おじさ・・・、あっ、ママ」少女の呼びかける声で我に返った「いや、ちがうん・・ん、ママ？」少女が声をかける方向へ私も振り向き、視線をやった。そこにいたのは年は私と同じぐらいだろうかスラッとしたスタイルの女性がこちらへ向かってきた。
「ママ、迎えに来てくれてありがとう」と少女は女性を迎えた。なるほど、少女のお迎えか。と考えていると
「このおじさん、勝手に学校に入ってきて・・」と母親に話し出した
「いや、私はこの学校出身で・・」と話だすと
「もしかして・・」少女のカバンを受け取った母親に私は声を掛けられ私は母親の顔に視線を合わせた
「もしかして・・」私も母親に視線と同時に言葉を合わせた『奇跡』『神様のイタズラ』『弱り目に祟り目』偶然というのは恐ろしいものである。そう、母親は初恋に失恋を教えてくれた彼女であった
「ん、ママ」さっきの違和感はこれだったのか。少女と彼女がなんとなく重なっていたのだ