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第二章
満開の桜並木を歩いていると、桜の木を眺めている女の人に出会った。
その木は、どの桜の木より大きく立派なもので、桜の木の主のような貫禄があった。
女の人の真っ白なワンピースと、背中の辺りまである黒髪が強い風に吹かれた。
女の人は泣いていた。
声も出さず、ただ涙を流して静かに泣いていた。
僕はその瞬間、今までに感じたことのない感情に支配された。
(なんだ、この気持ち)
胸の奥が熱くて苦しい。
鼓動がいつもより早くなり、息ができない。
でも嫌な感情じゃない。
どちらかといえば、心地いい。
これって?
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