2 幼馴染

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甲斐は「痛い痛い、やめろ汰月」と言って簡単にお兄の腕から抜け出すと、逆にお兄の腕を掴んで背中の方に引き瞬時にキメた。 「いててて、ギブギブ」 ……いやいや、家の前でなにやってんだし。いい歳して恥ずかしいわ。 「お兄、今日は早かったね」と私は呆れながら言った。 「あー今グランドの照明壊れてて暗くなる前に部活終わるから」 答えながらも、お兄は甲斐のワイシャツを掴んで組み合おうとしている。 「俺今さ、体育柔道でさ。クラスのでかいやつら投げ飛ばしまくってんだよね。甲斐くらいでもいけるかも」 「よし、返り討ちにしてやる」と甲斐もお兄の襟元を持つ。 「バカなことやめてよね。怪我するわ」 私は手に持っていた空のペットボトルで、お兄と甲斐の頭をパパンと高速ではたいた。 ほんとに小学生の頃から成長してないな。二人揃うと余計だわ。 ……それにしても甲斐の頭、こんなに高かったかな。お兄は全然変わらないけど。 「甲斐、夕飯食べてくでしょ? 母さんに甲斐の分も用意してって言ってくるわ」 そう言うと、お兄は投げ捨てていたバッグをパッと拾って家の中へさっさと入っていった。 相変わらず慌ただしく騒がしい。 「ねえ、さっき言いかけたのって?」 嵐が去って呆然としている甲斐に、私はたずねた。 「え、 なんだっけ」と、甲斐はお兄にぐちゃぐちゃにされたネクタイを締め直しながら言った。 「丹田くんがどーのこーの」 「ああ、いや、いい」 ……なんだし。 私が食い下がろうとすると、甲斐はバッグを持ってウチの門をくぐった。 結局教えてくれないのか。 私は最近甲斐の考えてることがよくわからない。 中三くらいからかな。なんとなく分からなくなったのは。 それまではもっとお兄みたいにただただおバカで理解しやすい弟みたいな存在だったのに。
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