22人が本棚に入れています
本棚に追加
玄関を開けると、甲斐は「お邪魔しまーす」と小さい声で言って私より先にリビングに入っていった。
するとママの黄色い声がキッチンの方から飛んだ。
「あらまあ、甲斐くんまた背が伸びた? 羨ましいなー。汰月は一向に伸びないのよね。菜月もだけど」
聞こえてますが。と思いつつ、私はわざとゆっくりと靴を脱いだ。
お兄はお風呂かな。ママと甲斐と三人になると、ママがうるさくて嫌なんだよね。
「甲斐くんは彼女できたの? やっぱりモテるんじゃない?」
おいおいおばさん。セクハラでは。
「いやいや、全然っすよ」
「もうさ、いっそのこと菜月と付き合ってあげてよ。そしたら甲斐くんもいずれウチの子になるじゃない!」
こら。こらこら。また始まった。甲斐の顔を見るたび、ママはいつもこうだった。
「いやいや、菜月は妹みたいなもんすから」と、甲斐が言った。
なに?! 妹? と私は玄関に座り込んだまま目をしばたかせた。
いつの間に。私は甲斐のお姉ちゃんのつもりでいたのに。
でも確かに……。と私は思った。
確かに最近はもう弟という感じではなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!