3 四月の約束

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「今更って。マナのこと好きだとは聞いてなかったし」 「いや、流石に察してると思ってた」 「ふーん」と甲斐はつまらなそうに言って無言になった。 え、ほんとに気がついてなかったとかあり得るのかな? あんなに私マナのこと甲斐にききまくってたのに? 「で、マナが好きで、どうすんの?」 しばらく黙って歩くと、甲斐は小さい声で言った。 「え? えーっと。とりあえずは行動しなきゃね。せっかく同じクラスになったんだし」 「何するつもりだよ」 「何って、告白しかないじゃん」 私がちょっとウキウキとそんなことを言った時、甲斐が急に立ち止まった。 「甲斐? どうしたの?」 「おい。ちょっとさ、あそこ寄ろうぜ。この中のジャングル公園」 甲斐は通りかかった大きな池のある公園の入り口を指差した。 「え、いいけどお腹空いた」 「どっちみち今帰っても母さんたちまだ帰ってないだろ」 そう言って甲斐はずんずんと公園の中に入って行ってしまった。 そして木製のアスレチックがある遊具広場まで来ると、甲斐はベンチに座った。 「わーここ懐かしいね。お兄と甲斐が私のことよく置いてけぼりにしたとこだ」 甲斐は無反応。 「どうしたの? なんかさっきから変だけど」 「菜月さ、マナに告白しない方がいいよ」 私はびっくりして甲斐の顔を見た。ふざけてるのかと思ったら、あら? 真面目な顔。 「なんで?」 「いや、それは……」 言いかけて、また甲斐は黙った。こんな真剣な雰囲気の甲斐は初めて見た。 いつもだいたい適当か悪ノリしてるだけなのに。 「それは?」と続きを促すも、足元を見たまま甲斐フリーズ。なんなんだ一体。
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