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そして待つこと十分くらいかな。ようやく顔を上げた甲斐が、ブン!と勢いよく私の顔を見た。
「菜月さ」
「はい」
「あの……」
…………。
またフリーズかい! と私は流石にイラッときて甲斐の頭をはたいた。
「何回止まるのよ。もーほんとにお腹空いたし帰るよ」
と私が立ち上がると、甲斐は慌てて私の手を引っ張った。
「待て待て。いや、だからさ、その。マナに告白すんなよ。マナはな、告白してくる女が一番嫌いなんだよ」
甲斐の手を振り切ろうとしていた腕の力を緩め、私は振り返った。
「え。なにそれ。モテ過ぎて?」
なにその王子様的贅沢発言!
「特に、自分の内面も知らないような初対面の女に告られると、相手がどんなに可愛かろうが気持ち悪がる! これはジュニアユースの時に実際にあったから確かだ」
「がーん」と私は普段なら絶対言わないようなダサめの擬音でリアクション。
「まあ、でもそうだよね。突然知らない人に告白されてもね……。確かに勝手に家族構成とか好きなものとかリサーチ済みの女とか、本人がいないとこで勝手にマナ呼びしてる女とか、一目見たくて幼馴染をとことん利用して毎回試合観に行ったりしてる女なんて、気持ち悪いか……」
「うぉい。心の声漏れてるぞ」
「あ、しまった」と私は口をつぐんだ。
「つまりだ。菜月が告白したら100%フラれる。これは決定的だ。フラれてもいいのか? せっかく同じ高校、しかも同じクラスになったのに、初っ端から玉砕していいのか? その後の学校生活を想像してみろ」
ビシーッ!と甲斐は私の顔を指差した。
……なんかこいつ、さっきよりえらく活力に満ち満ちてきてないか?
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