3 四月の約束

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いやいや、そんなことよりも。 確かに同じクラスになったってだけで勝手に運命を感じて、勝手に盛り上がって、勝手に告白とかさ。どんだけ独りよがりなんだ。 絶世の美少女ならまだしも。私だぞ? 「甲斐もさ、そこそこモテるじゃんね」 「そこそこ?」と納得の行かなそうな甲斐は取り敢えず無視。 「やっぱり仲良くもない子に告白されたら気持ち悪いもんなの? ……あれ? ていうかさ、あんた中三の時、突然告白してきた塾の知らない女の子とすぐ付き合いだしてなかったっけ?」 「いや! あれはさ、すげー可愛かったし、そのなんだ? 結構イケイケな子だったし。なんつーかその」 「あー。ヤレそうだなって?」 甲斐は赤い顔をして口をパクパクさせた。いや、金魚か。 「お前な。そういうこと軽く言うなよ。そんで俺の話はいいんだよ。とにかくマナには告白は絶対しない方がいい」 「えー。じゃあどうすればいいのよ。ひっそり片思いして満足してろって?」 と私は泣きそうな声を出して言った。 せっかく同じクラスになれたのに、そんなバカなー。 「そうだな。片思いで満足しておくのが一番だな」 甲斐は腕を組んで一人でウンウン頷いている。 「いやだ! だったら告白して玉砕した方がよっぽどいいよ! もう影から見てるだけなんて辛いし、何より今の自分、気持ち悪いことに気がついたよ、私」 「いや、待て。早まるな」 甲斐は右手を開いて掲げ、待った! のポーズ。さっきからいちいち演出過剰だな。 「分かった。こうなったら菜月は、マナの一番の女友達のポジションを狙え」 イチバンノオンナトモダチ……? 考えてもみなかった。 「な? その方がずっと、マナに好きになってもらえる可能性は高い」 え、そうなのかな。私は口元に手を当てて考えた。 「そっか。どうせ同じクラスなんだから、早まらず時間をかけて仲良くなって、それから告白という手段の方が……」 「いや待て!それもダメだ。菜月から告白した時点で、マナは絶対に引く! ドン引きする!」 「それじゃ仲良い子からの告白もダメってことじゃん」 「その通り」と甲斐はまた人差し指を立てて私を指した。
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