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1.田舎に住んでる王子様
ほぼ十年ぶりに再会した初恋の王子様は、いまでもやっぱり王子様のままでした。
なんて、ロマンチックな衝撃を受けた田倉頼子は、王子様こと加賀弘毅の母親、多美子に連れられて階段を上り、これから生活していく部屋へ通された。
「ぼろっちいけど、広いでしょ? ベッドはないし、クローゼットじゃなく押入れだけど、我慢してね」
「我慢だなんて、そんな」
ふるふると首を横に動かした頼子の、ひっつめにした髪が後頭部で揺れている。ふだんはコテをあてて毛先でふわりとカールをさせるのだが、今日は校則に従順な女学生みたいに、後れ毛の一本も残さないくらい丁寧に撫でつけて、飾りのないゴムでまとめていた。
服装も着慣れた明るめの、ふうわりとしたものではなく、ジーンズにシンプルなカットソーという恰好にしている。
(田舎に行くんだから、おしゃれをしたら浮いちゃいそう)
そう考えてのファッションだったが、玄関前で車を降りたところで頼子の心の王子様、弘毅とすれ違ってしまったことで、後悔が芽生えた。
(今日ぐらいはおしゃれしておけばよかったな)
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