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「いえ、その……そのままでいいです」
むしろ、そのままがいいと頼子は真っ赤になった。あらあらと多美子が笑う。
「そうだ、かあさん。明日は俺、深山さんの手伝いをするから」
「あら、そう? それじゃあ、お昼はあちらでいただくのね」
「あ! あの……私は、明日はどうするんですか」
ん? と多美子と弘毅がおなじ顔をする。
「母から、人手が足りないから手伝いをしてくるようにって」
「しばらく、のんびりしてからでもいいのよ」
「いえ。大丈夫です」
「やることがあったほうが、安心するのかもしれないな」
そのとおりだと頼子はうなずく。
「それなら、さっそく来てもらおうかしらね。なにも難しいことじゃないのよ。お年寄りの話し相手になったり、食事やお散歩の手伝いをするだけだから」
「それは、老人ホームの仕事ということですか?」
「まあ、そんなかんじね。こんな場所だから、若い人が少なくって。話し相手ができるだけでも、心に張りが出るのよ。だから、なにかをしなきゃなんて気負わずに、ただ話の聞き手として、いてくれるだけでも助かるの。資格を持っている職員は、やることがいっぱいあるから。その間に、おじいちゃんおばあちゃんの相手をしてくれる人がいると、ありがたいわ」
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