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2.王子様は二次元がお好き?
老人ホームの職員やボランティアたちが持ち寄った総菜で夕食をとった頼子は、多美子の運転で外灯のない道を家に向かった。日が沈んでも星々が無数に輝く世界は、深い藍色に染まっている。そんな景色にも慣れてきた頼子は、ふうっと息を吐いて今日のできごとに思いをはせた。
(けっこう、仲良くなってきた気がするなぁ)
年配の方々は頼子が想像していたよりもパワフルで、手先が器用で物知りだった。話し相手になってほしいと言われて身構えていたのだが、頼子は人生の大先輩の話を聞きに行っている感覚でいる。
(知らないこと、たくさんある)
たとえば散歩の途中、ふと立ち止まって植物の話をされる。たまに山菜を見つけて、摘んで帰ることもあった。それだけでも都会育ちの頼子には新鮮で、たのしかった。
「だいぶ、ここでの生活にも慣れてきた?」
「はい。まだ、ちょっと抜けきらない部分もありますけど」
ついつい、コンビニに行けばいいや、と考えてしまう自分を恥じると、そういうものよと多美子はなつかしむ。
「私も弘毅も。美里だって、はじめはそうだったもの。まあ、美里はほとんど、こっちで生活していないけれどね」
「あの、そういえば美里さんは?」
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