16.淫らに許して王子様

11/13
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/219ページ
「まさか、そんなことはないだろうとは思ったんだけど。頼子ちゃん、いろいろあって傷ついて、ここに来たんだろう? だからちょっと、自暴自棄になっている部分もあったんじゃないかなって。そう、考えたんだ」 「弘毅さん」 「だから、そんな状態の子を……弱っているところにつけ込むようなマネを、したくなかった。なにがあったのか詳しくは知らないけど、会社を辞めて家を離れるくらい、人間関係でいろいろあったとは聞いていたから。だから、それでちょっと冷静さを欠いているというか、そういう状態のときに、俺の、その……ひとりでシているところを見られてしまったわけで」  しゃべりながら顔をだんだん赤くしていく弘毅が、なぜかとてもかわいく感じた頼子の頬が持ち上がる。 「弘毅さんは、やっぱり私の王子様です。そんなふうに、私を大事に考えてくれていたなんて」 「ほんとうの王子様なら、きっと上手に気持ちをなだめて、頼子ちゃんの心をなぐさめていたんじゃないかな。俺は誘惑に勝ちきれなかった」 「私がそうしむけたんだから、しかたないですよ。そうだったから私、ちゃんと弘毅さんをあこがれじゃなくて、ほんとうに好きなんだなってわかることができたんです。だから、でも……あしらわれているんじゃないかなって、不安になっていました。だって最後までは、してくれなかったから。とりあえず私を満足させて、終わらせてるって感じがして」     
/219ページ

最初のコメントを投稿しよう!