月と太陽

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「那月、起きてる?」 「陽人、起きてたの?」 「やっぱりまだだ。あのさ、トイレ行きたいんだけど、ついて来てくんね?」 「いいよ」 「サンキュー! 俺、たぶん外出たら迷子になりそうでさ」 「確かに。意外と方向音痴だもんね」 周りを起こさないように、コソコソとテントを出る。 腕時計を見ると、すでに日付けが変わっている時間だった。 みんな寝ている時間で辺りはシーンとしていた。 「陽人、トイレそっちじゃないよ?」 「知ってる」 「え?」 スタスタと歩いて行く陽人はトイレとは反対方向に進んでいる。 「どこ行くの? 怒られちゃうよ」 「大丈夫だよ。ちょっと行きたいとこあってさ」 方向音痴のくせに、こういう時だけ目的地目指してどんどん進んで行く。 「よし」 陽人は突然足を止めたかと思うと、その場にゴロンと寝転がる。 そこは少し小高い丘になっていて、辺りに木はなく、大きく空だけが映る。 「那月も座れよ」 「う、うん」 ぽんぽんと自分の隣りを叩く陽人の示す場所に座る。 「綺麗だな」 「そう、だね」 空を見上げて言う陽人に少し戸惑う。 「これを、見に来たの? こんな真夜中に?」 「そう。那月と話をしようと思って」 「話? なに? 改まって」 意外な展開に戸惑ってしまう。 「ずっと思ってたことがあってさ。せっかくだし話そうと思って。その前に、ゆっくり星でも見ようよ」 「う、うん」 長い付き合いでも、なにを考えてるのかよく分からない時がある。 女の子を口説くのならまだしも、幼馴染の僕を連れて、星を眺めるなんて。
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