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「那月ってさ、俺のこと、どんなやつだと思ってる?」
しばらくぼーっと眺めていたかと思えば、突然不思議な質問を投げかけられる。
「陽人のこと? いつも明るくて、スポーツもなんでもできて、クラスの人気者で、羨ましいって思うよ。名前の通り太陽みたいな人で」
昔から思っていたこと。
面と向かって伝えるのは初めてだけど、ずっと思っていたことだった。
「そっか。よく分かってんじゃん」
「なんだよそれ」
自分のことを褒めさせておいて、嬉しそうに笑っている。
「じゃあさ。俺が那月のこと、どんなやつだと思ってるか分かる?」
さっきの笑った顔から目に真剣さが宿る。
陽人が思う僕?
「難しいこと聞くね。根暗なコミュ障とか?」
僕の回答にぶっと吹き出す。
「そんな酷いこと思わねぇよ。まあ、たしかに、もっとみんなと積極的に話せばいいのにとは思うけど」
なにが面白いのかゲラゲラと笑い転げている。
真面目に答えたのに酷いな。
「那月はいろいろ気にし過ぎ。ネガティブ過ぎて周りが見えてねぇんだよ」
「どういう意味だよ」
ネガティブなのは自覚があるけど、周りが見えてないってなんだよ。
「気づいてないだろ、周りが那月を頼りにしてるの」
「頼りにしてる? 僕を?」
「ほらな。周りがどう思ってるから知らないだろ?」
「どうって、暗いとか話しかけづらいとかそう思ってるんじゃないの?」
「なんでそんなにネガティブなんだよ。違うよ。いつも分かりやすく勉強教えてくれるし、優しいって言ってるよ」
「そんなはずないよ」
「ない訳ないだろ。俺がちゃんと聞いたの」
少し口調が強くなる。
そんな怒らなくてもいいのに。
「那月は自覚が無いのかもしれないけど、それぞれが理解しやすいように人に合わせて教えてやってんだよ。同じ問題でも増田に教えるのと佐藤に教えるのと変えてるだろ?」
「それは、ふたりはタイプが違うから」
「それが凄いって言ってんだよ」
「え?」
「俺はあいつらのそういう違いは分かんない。でも、那月は分かった上でそれぞれに合わせてやり易い解き方を教えてるんだろ? 俺には真似できねぇもん」
「それは……」
なにも言い返す言葉がない。
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