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「さっきだってそうだよ。ハイキングの途中で出された意地悪な問題もあっさり解いちゃうし。那月がいなかったらできてなかったことだろ」
「でも、歩くの遅くて迷惑かけちゃったじゃん」
「迷惑? 誰かそんな風に言ったやついた?」
「言っては無いけど、みんな思ってたでしょ?」
「あのなぁ、なんでそうネガティブに考えちゃうんだよ」
「僕も陽人と同じように名前通りだからだよ。夜みたいに暗い人だから」
僕の言葉に陽人は大きなため息をついた。
「あのなぁ、那月。夜は暗くないぞ?」
「何言ってんの?」
「何言ってんのはこっちのセリフだよ。よく見ろ。どこが暗いんだよ。月も星もあって明るいじゃん」
「それは、そうだけど」
「さっき那月が俺のこと言ってくれたみたいに、昼間の太陽みたいな明るさじゃないかもしれないけど、夜だって真っ暗なわけじゃないだろ。それに、月や星は夜じゃないと輝かないだろ。それと一緒だよ」
「どういう意味だよ」
「だから! 俺はバカだからうまく言えないけど、夜には夜の良さがあるってこと!」
もどかしいのか頭を強く掻き毟る。
言いたいことは少し分かったけど。
「要するに、俺にできないことを那月はできてるってこと。だから、俺だって那月のこと羨ましいと思ってんの!」
「え?」
「だって、遊んでくれるやつはいるけど、頼ってくれるやつなんかひとりもいないし」
「でも、体育の授業とかは頼られてるじゃん」
「あれは頼られてるんじゃなくて任されてるだけ」
「そうかな?」
「そうなの!」
すこし拗ねたように言う陽人。
そんな風に思ったこと無かったな。
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