悪行 女性の敵

6/8
前へ
/135ページ
次へ
「あぁっー。ウルせぇぇぇぇぇー!!」  ブッチャーの怒声が音を掻き消した。その瞬間、音を放っていたであろうものが正体を現した。  それはブッチャーの背丈を越えるほど大きなプリン。  しかし、その表面は皮を剥がれて肉丸出しといったようなものであった。そのプリンには目らしきものが付いており、そこから血のようなものが流れていた。 「ごめんなさい」「ごめんなさい」「ごめんなさい」「ごめんなさい」  突然、女性が何度も謝り始めた。彼女の「ごめんさい」は誰に向けての言葉なのかは、まるでわからない。ただ、うつむいて地面に謝っている。  ブッチャーはまたの騒音に顔をしかめたが、今度は叫ぶことはなかった。 「ふん。どうせ隠れて人の食い物でも食ったとかだろう」  女性の謝罪をそう解釈したブッチャー。……こちらには何もわかりませんが、少々短絡的に過ぎるのでは? 「ウルせー。こちとら考えるのは苦手なんだよ」  いやー怒られてしまいました。おほん、では気を取り直して。  女性の謝罪は盗み食いによるものと捉えたブッチャーは、何を思ったのか堂々と肉プリンに近づいていった。 「こんなもの食ったら腹壊すぜ。うげーやりたくねー」  そうつぶやいたかと思うと、ブッチャーは肉プリンにかぶりつき、猛烈な勢いで食べ始めた。とてもブッチャーの体に収まる大きさではないのだが、見る見るプリンは小さくなっていった。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加