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げっそりとした顔で歩くブッチャーはまるで幽霊のよう。この街の大通りを歩くには不釣り合いな様子であったのだが、街にも大きな異変があった。
気が狂ったかのようにハネとび叫ぶ男、何か大切なものを失ったかのように泣く少女。天下の往来で素っ裸で堂々と歩いている女性。
この異常事態を気にする事無くブッチャーは進んだ。彼にとっては見慣れた光景で気にしていいものではなかったのだろう。
こちらからみても、キレイでシックな石の町が人々の狂乱で汚れてしまったのは見るに堪えない。
ブッチャーの行く手には、本土へ渡ったときの小船が見えていた。
「あぁ。またやり損なっちまった」
そんな捨て台詞を陸に残して小船へ飛び乗った。
彼は欲望のままに生きる男。今は「悲しみ」を癒やせる場所。悪徳の者の楽園。イービルランドにての休養を望んでいた。
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