悪行 女性の敵

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「へっへー。まずは酒。そして女漁(あさ)りだ」  なんとも子悪党らしい発言を吐いたブッチャーはマリアの指令など最初から頭に入っていないようだ。本土で欲望を果たす。それだけが彼の目的である。  近くの酒場に昼間から堂々と入り込み、軽くビール三杯飲み干した。その後、酒場を出た彼は適当な店をみつけて、「間に合わせの布」程度の装備を改めた。  今回のブッチャーの仕事場となる街は、ラクアンピースの東海岸沿いにある街で、海を挟んだ北側には「悲しみ」と「苦しみ」が蔓延(まんえん)する陸が見えている街である。  そんな境界線にあるこの街はかつてあった国々の国境にあたる場所でもあり「イワカベ」と呼ばれている。  このイワカベには青い瞳、金髪などの特徴を持つ人々が集う場所のようで、様々だが、スーツやドレスなど品の良い格好をしてる者も多い。石畳に石の家、時計台などもあり、それなりに美しい街並みだ。  その街の景観を壊さないよう、スーツを着込んだブッチャーは、中々に決まっていた。目付きの悪さがなければ、女性受けがよかったかもしれない。  その悪い目付きでブッチャーは好みの女性を探していた。 「おっ。あのクッセ毛の出方。あいつが良さそうだな」  どうやらメイド服を着た金髪、ミドルヘヤーの女性に目を付けたようだ。獲物選びを終えたブッチャーは、集合住宅の間の路地裏に消えたメイド服の女性の後を追った。
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