赤い関西女

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「ねえ、晴子、その話、長くなるん?」  海月の鋭く澄んだ瞳が、晴子を真っ直ぐに射抜く。ずっと一緒に過ごしていても、たまに緊張してしまう。この感じは何なのだろう。他の子よりやや長めのスカート丈に、艶やかな黒髪。真っ直ぐ顔を上げて尋ねる海月は、華奢な体つきのくせに威厳があった。 生まれは両親の地元で大阪かどこかだと聞いたが、育ちは東京のはず。両親の影響だろうが、周りが標準語の中、普通は目立たないように外では標準語にしそうなものだ。しかし海月のそれはもうコテコテだった。  お調子者の男子や海月を気に入らない女子に、何かにつけて「関西人」と言われているのを晴子は見たことがある。  海月はそんな挑発もどこ吹く風だった。いつもは涼しげな水色、怒ったり感情が高ぶると赤いオーラをまとっているかのように見えた。間もなく声は鎮まり、逆に堂々とした態度に尊敬の念を抱き、海月の関西弁はカッコよくすら聞こえてくる。海月はクラスでも一目置かれていた。
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