コンプリケート

2/32
前へ
/34ページ
次へ
「ミーナちゃん、俺と付き合ってたことにしなよ。」 軽く私の手を触れた悠人君の手は少し冷たかった。きっと私のことをすごく見ていると思う。 めちゃくちゃ視線を感じる。 感じるけど…私には見返す勇気がなかった。 目を見てしまうと言い返せないと思ったから。 あの綺麗な色素の薄い瞳。 私にはたまらなくプレッシャーに感じる色。 このどうしようもなく、重い時間が早く過ぎることを心底祈った。 こんな話しを聞かれたのがものすごく恥ずかしかったし、早くこの場から消えたかった。 向こうが諦めるまで私は黙る。私は心に決めた。 ただ、きっとこの人は本当に私を救ってくれると思う。そこに飛び込む勇気が当時の私にはなかった。 久しぶりに起きてからも記憶に残る夢を見た。 鮮明に思い出す。 高校3年生の時の思い出したくないシーンのひとつだった。 今思うとあの時の私は可愛かった。 素直になれない、思春期独特のプライドが高く見栄を張ってた時期。 今思うと何であんな嘘をついたのかわからない。 たかが恋愛のひとつしたことがなかっただけなのに。 セットしたアラームの3分前に目を覚まし、もったいない感じを感じつつも私はベットから起きた。 こんな夢を見たのもきっと彼に会ってしまったせいだ。 27歳の大人になった彼に。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加