155人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
ブーブーブー、マナーモードのスマホが振動してる。おかしい、寝過ごしたかな。目覚ましが鳴るまで寝るなんて、ここ数年なかったのに
手を伸ばしてパシッ、掴んだ俺のスマホは
「・・・・・・あれ?」
振動してない。ってことは
鳴ってるのは、俺の隣で寝息をたてる貴文さんのもの。早朝に電話せざる負えない緊急を要する何かが、誰かの身に起こってるのかもしれない。桜吹雪みたいに脳裏を駆け巡る不安に、ぶるっと震えたとき
「どうした瞭、何を動揺してる」
ガバッ
びっくりする勢いで布団をはねのけた貴文さんが俺の頬、肩、腰に触れてきて。電話が鳴ってるのに、誰かが困ってるかもしれないのに、心配されたことが嬉しくて、愛される喜びにじーん、と浸っているとぺろん、着物の裾を捲られた
「ちょっ、どこ見てるんですか」
「大事な場所の確認を。良かった、無事だな」
うう、本気か冗談か分からない
端正な顔は真剣だけど、やってる行為は助平なだけ。戸惑う俺を見下ろし丁寧に、両脚を隠すように裾を整え、蹴飛ばした布団をかけてから
「怖い夢でも見たのか」
囁く彼の声は優しくて、キュンキュンする、胸が
肘を曲げて手首を垂らす薄い人をちっとも、怖がらないのに、怖がる俺を馬鹿にすることなく寄り添ってくれる貴文さんが好き、大好き
最初のコメントを投稿しよう!