弟の結婚 ニ

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やっぱり翔だ 電話の相手が分かったら、雑音の検討もつく。あれは、吹き抜ける風の音。風を切り走る翔の足は異常に速くて、それを知った陸上部の人達は うっぜーなテメェら、黙って聞いてりゃしつこく通ってきやがって 訪ねて来たその日に逃げ帰った 翔が早朝に走るようになったのは、声をかけられるのが煩わしいから。言葉にならないモヤモヤが胸に渦巻く。仲が良いのは知ってたけど、朝はゆっくりしたい貴文さんと、邪魔されることなく走りたい翔は互いの、踏み込まれたくない領域を許し合ってる さっき、急に怒ったのは・・・・・・翔との電話を、俺が邪魔したから? 「いるぞ、ここに」 あ・・・・・・ 目尻に溜まった涙が零れる寸前、肌に寄せられた唇。それは涙を吸ってすぐ、離れてしまった 『知ってる。わざと置いたとしても、兄貴のスマホを勝手に触る発想瞭にねぇし』 「チッ、お前に言われるまでもねぇ」 寂しい、貴文さんの温もりが恋しくて 『兄貴って、瞭が絡むと短気だよな』 「当然だろう」 彼の腕を胸にぎゅっと抱く 身を微かに震わせた貴文さんの顔は見れない。だって、怒ってるかもしれない。翔との電話を邪魔してるから 『だったら隠しとけ。瞭が姿を現せば、N社ビル全体でザワつくだけだ』
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