弟の結婚 ニ

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「お、いいのか」 貴文さんの声が弾む 『ただし、見つかるのは無しだぞ』 誰に? 思っただけのつもりが 『圭吾が気にするだろ、瞭と兄貴が揃いN社に顔を出したら』 声に出してしまってたらしい えーっと 何か、やらかした気がするんですけど・・・・・・ 結婚を申し込むのは当日だし、俺は目立つからN社までの半径2Km以内に近づくなと翔に厳命されてる。なるほど、俺と翔が似てるから恋人が結婚を承諾するまで俺と会わせたくないのか。自分なりに納得したのだけれど、一日一日を長く感じてしまい、カレンダーを見ては溜め息をつき 圭吾くんのイメージに合うプレゼントを用意したいな ポロッと口にしてしまった。俺の言葉を真剣に聞き、願いを叶えようとして貴文さんが動いてくれることを想像もせずに 「安心しろ。野郎どもの視線の前に瞭を曝す真似はしねぇ」 胸がドキドキする はっきりと、真正面から合わさる強い光を放つ目に射抜かれてゾクリ、熱を求めた肌が震えた 『分かった。兄貴を信じる、じゃな』 ブチッ、通話の切れた音と深い口づけは同時で 「んっ、んんふっ、ぅ」 逞しい腕に抱かれ、ゆっくり、大切に、マットに背を沈めたとき。翔を責めた罪悪感を薄めるくらいの、愛しさが全身に湧き出て、穏やかな微笑も、待たされる時間を厭わなかったのも、俺の為だったと自惚れたくなった
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