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「失礼します」
元気な声が響いて
「また来た」
松井さんがぼやく
「松井さん、昨日ご提案されてたナッパレザーの件ですが、それにパテント加工するってことでいいですか」
自社ブランド企画小物チームリーダー、松井さんの脇からパソコンを覗き込む製作部の丸山は、メールですむ内容でも企画フロアに顔を出してくる。背が高くて、涼やかな目元が印象的な彼は
「そうよ。そう書いてたでしょ」
素っ気なくあしらう彼女が
「読んだから来たんです。色合いのイメージもあるんですよね、見せて下さいよ」
カシャカシャカシャ、スマホのカメラを向け連写するほどに、笑顔がかわいい
「ふっ、仕方ないわね。イメージ画像を見せてあげるわ」
モデル料よ
自分で作れるものを見にくる丸山の行動は迷惑この上ないが、松井さんに仕事の手を止めさせる丸山は素直に凄いと思う
「うわっ、高い」
松井さんと丸山、そして俺が同時に天井を仰ぐ桜田を見た
「あ、ごめん」
視線を浴びた桜田の
「SNSを意識した店舗リニューアルを部長に任されてんだけど、要望と予算が合わなくてさ。声に出してた」
眉が困ったように下がる
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