弟の結婚 ニ

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「俺に手伝えることあるかな」 「ありがとう瞭ちゃん、必要なときは頼む。いま仕事が楽しくってさ、限界まで頑張りたいんだ」 限界まで、か 桜田は気持ちの優しい男だから、元恋人と友人の裏切りを知っても彼らを責めたり、恨んだりすることができない。代わりに恋人の変化に気付けなかった自分を責めてるようで、早朝から深夜まで仕事に打ち込む桜田のことが心配だ。けど・・・・・・ 「分かった。必要なときに声をかけてくれ」 仕事が楽しい、いまはその言葉を信じるしかないと思ったから、頷いた 「僕、ずっと気になってたんですけど、木山さんのマスクってどこに売ってるんですか?」 「市販されてないわ。特注だもの」 よくご存知で、松井さん 「特注・・・・・・。うわあ、興味湧くなあ」 製作側の性だろうか。今にも分解されそうな眼で顔を、いや、マスクを凝視されると腰が引ける 「木山さん、そのマスクを添えて企画書を提出しませんか」 「いや、あの、無理」 コレは渡せない 疲労の滲む瞭は可憐さが増す、頼む、ハイエナ野郎どもに瞭の美しさを再認識させないでくれ。瞳を揺らし懇願してきた貴文さんからの贈り物だ マスクを両手で覆い、ぷるぷる首を振りながら、コロコロと椅子を転がし丸山から距離を置いた
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