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考えすぎであって欲しい。だって、彼の笑顔は松井さんお墨付きの・・・・・・
「そうだ、松井さん!」
気は急くのに「どっこいしょ」少し疲労の残る重い身体はかけ声なしで、持ち上がらない。桜田と伊藤さんに出遅れたけど、よし! 一歩を踏み出そうとして
「へ?」
待っ、ちょっ、待って
ズンズン、長い足を有効に使った歩幅で、丸山が近づいてくる
「うわっ」
慌てすぎて、椅子にぶつかった
スタスタ
一点を見据えた丸山が通り過ぎていくのを、わたわたと手を泳がせ、バランスをとろうともがきながら、斜め下から見上げる切なさはたぶん、人生のベスト5以内に入ると思う
「木山部長お帰りなさい」
はあっ?
なんでお前が貴文さんを出迎えるんだ! やっぱり貴文さんが目的か、悔しさと嫉妬で体中の神経が逆立ったそのとき
「退け!」
肌を切り裂きそうな鋭い怒声と、強く踏み込む足音と同時に、俺の下に吹き込む風。ガンッ、スチール製のデスクを殴りつけて体を止めた貴文さんの
「・・・・・・っ、ハァハァ」
荒く吐き出す息も、しっかり俺の腰を抱く腕も、恐ろしいものに出くわしたかのように震えてる
・・・・・・貴文さん、貴文さん
カタカタ震える身を、床に仰向ける彼の上で反転させ、激しい呼吸を繰り返す胸に胸を合わせて
「目眩は? 吐き気は? 怪我はないか?」
俺の心配をする彼の頬を両手で包み、首を振った
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