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勤務中だからと、俺を抱き上げた貴文さんが廊下へ出た。丸山もついてくる
あーあ・・・・・・
愛の大きさでは負けないけど、見つめ合う二人の姿を間近で見せつけられるのは辛い。広い肩に顔を埋めてると、貴文さんの足が止まった
「瞭のことに関して、お前から聞くことは何もない」
淡々とした口調で言う
淡々としてても、低く張りのある声は耳に心地よく響く。この声に甘さが足されるとぽっ、体の奥が温かくなって、熱い息が漏れる
「僕が、木山さんが腰から転んだ原因であっても、ですか」
匂いも好き
じっとり汗ばんだ肌から香る、濃い男の匂いに瞳が潤む
「必要ない」
んっ
身動ぎしたら布の擦れ合う音が響いて、貴文さんの体が少し膨らんだ。筋肉を張り詰めさせたのは、なぜ?
「どうして・・・・・・っ、必要ないのか教えて下さい」
ドン、右足を階段に置いた
話、終わったのかな?
顔はあげずに、耳に意識を集中して
「呑み込みの悪い奴だな。お前がどうこうしたから、瞭が危険な目に遭ったわけじゃねえ。職場の安全確保を見落とした俺に落ち度がある。状況を把握し、その穴を埋めるのに客観的な視点は必要だが、お前個人の視点は要らねぇな」
魔法のように不安が消えた
貴文さんに恋する人と、貴文さんが見つめ合ってももう怖くない。だって、俺はこんなにも大きな愛で包み込まれてる。ぎゅっと、首に回した腕に力を込めた
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