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「こんにちは、父さん」
「やあ婿殿、瞭。寄ってくれてありがとう」
父さんが笑う。暗い陰りのない明るい笑顔だった
腰を上げようとした父さんの肩に、貴文さんの手が乗る。立たなくていい、言葉にしなくても労りの滲む仕草は父さんに通じたようで
「冷えてますね。いつからここに?」
「ついさっきだよ。でも、少し寒いかな」
いたずらっぽく笑った父さんが上着を羽織りコツコツコツ、縁側をノックして貴文さんに座るよう託した。俺は・・・・・・
「お茶の用意をしてきます」
言った俺を貴文さんが見下ろして
「ああ頼む」
ふわっと微笑んだ
何度も、もう幾度となく目にした優しい笑顔に胸がドキドキする
格好いいなあ・・・
片眉を上げる仕草もいい、少し困ったような表情も素敵だ。だけど、何に困ってるんだろう?
「瞭、婿殿へ向けた熱で、手入れしたばかりの庭を溶かす気か?」
ええー?
「そ、そんなつもりは」
ただ、格好よくて、魅力があって、男の色香溢れる貴文さんに見惚れてただけです。俺を茶化した父さんの目が笑ってて、どうにも照れくさい。父さんから視線を逸らし
「えーと、お茶の用意があるので」
逃げるように庭を離れた
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