迷走のとばりの中で

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「えっ!?あっ!うん。 無くしてないよ」 どう言う事だ? 確かに彼女の携帯から着信があり、 彼女の携帯が落ちてるって・・・ 俺は確かに確認したつもりだったが 確認するのを(おこた)っていたのだろうか? 「ちょっと待って確認するから」 「確認?」 彼女の声を無視して俺は携帯に残った着信を確認した。 確かに霧島凛火の名で着信は残っていた。 彼女が携帯を無くした事に気がついて 無かったのだろうか? 「実は君の携帯から電話があって、君の携帯を 拾ったて人からだったんだけど、それで・・・ 」 「それで?」 「襲われた」 「えっ!? どっどう言うこと?」 「いや俺にもわからない」 「・・・ 実はポストの中に携帯が入ってたの。 それで着信がして、 ポストに携帯が入ってるのに気づいたんだけど」 ・・・ 誰かが届けたのだろうか? 無言になった僕に携帯の向こう側から、 不安そうな声が漏れた。 「今どこにいるの?」 「ダメだ! まだ襲った奴が近くにいるかも知れない!」 「えっ!?あっ!うん」 「とにかく君は今安全な場所にいるんだね」 「自宅だけど・・・ 」 そのとき携帯の背後で、 何かのサイレンが走り去る音がしていた。 「今日は絶対自宅から出ないで。 明日学校で話そう」 「うん。わかった・・・ 」 僕はそれだけ伝えると携帯を切った。 途端に辺りは静寂に包まれていた。 どこか遠くでサイレンの音が聞こえてきた。 それもすぐに遠ざかり辺りは再び夜気をはらんだ 冷たさと静けさの中に埋没(まいぼつ)していった。 僕は携帯をしまい家路についた。
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