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仲間の一人が倒れた仲間に近づこうとした瞬間、
そいつの首が突然横に裂けて血を吹き出したのだ。
わけがわからず男は一瞬俺のほうを見ると、
気を失い、そのまま卒倒してその場に崩れ落ちた。
それを見た男の一人が下半身を露出させたまま
パニックになり、こちらに向かって走り出した。
屋上の出口を目指して。
だがその男がこちらに辿り着くことはなかった。
男は背中から血を吹き出し倒れたのだ。
屋上のコンクリートに顔面を打ち付け、
痙攣するようにピクピクと手足を震わせていた。
途端に伝播した恐怖は様々に伝染した。
恐怖で動けないもの、慌てて逃げ出すもの。
だが屋上の出口に向かって走り出した者の中で、
そこに辿り着いた者はなかった。
次々に血を吹き出し倒れる男ども。
その様子を固まって見ていた者はまだ生きていた。
そして動けなくなっていた。
動けば死ぬと言う暗黙のルールが、
その場を支配していた。
そんな沈黙を突然の奇声が破った。
出口には逃げれないと思った一人が奇声をあげ、
逆方向に走り出し、屋上のフェンスを乗り越え
飛び降りていた。
それをかわきりに男達は次々に走り出し、
屋上から飛び降り始めた。
その光景はネズミの大群が自ら自殺するように、
海にみなげするのと似ていた。
その時背後の耳元で声がした。
「やっかいな」
僕が振り返った瞬間、そこには誰もおらず
お腹に熱いものが溢れだした。
見るとお腹の辺りから血が大量に滲み出していた。
寒気と共に全身の力が抜けていく。
僕は死ぬのか?
薄れていく意識の中で再び囁きが聞こえた。
「でも一番やっかいなのはあなたよ。
私を助けてくれた事には感謝するけどね」
それを最後に僕の意識は完全に闇に途絶えた。
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